【ドキュメンタリー映画】壊された5つのカメラ(2011)パレスチナ イスラエルの日常を知りたかったら
本・映画・TV
2016年2月14日(日) 00:00
壊された5つのカメラ(2011)
2011年/パレスチナ・イスラエル・フランス・オランダ
監督:イマード・ブルナート、ガイ・ダビディ
うらやすドキュメンタリーテークvol.30上映会 10周年記念上映会~平和な社会のための抵抗のかたち~で上映された『壊された5つのカメラ』を観てきた。
入植がじわじわと迫り、自分たちの農地や住まいがゆっくりと奪われていくパレスチナ・ビリン村の日常を約5年間撮り続けた記録映像。撮影者でもあり、監督でもあるイマードがカメラを購入したきっかけは、四男を撮影するため。新しい家族の誕生を機に動画を撮り始める…遠い中東の地でも私たちと同じような家族がいるのだと思わせる。違うのは抵抗運動や兵士、銃、催涙弾があまりにも身近にあること。パレスチナ・ビリン村の人々がオリーブ畑や住まいを守るためのデモは、あくまでも非暴力で行われている。子どもも大人に混じり、銃を向けるイスラエルの兵士たちの前に立ちはだかり訴えかける。
どんなに威嚇をしても勢いが衰えない抵抗運動に苛立ちを見せる兵士達。ビリン村では逮捕者や死者がだんだんと増えていく。「死が身近になると非暴力を貫くのは容易ではない」と語りながらも、オリーブの苗を植えるため、すでにイスラエル側の土地になっている自分の畑に向かう。一方、大好きな大人が目の前で撃たれ亡くなるのを見て、「ナイフで兵士を殺せばいいのに」と言う四男。「子ども達がその怒りに耐えられるのか」と悩みつつもカメラを回し続ける。
この映画で驚いたことは、監督がパレスチナ人、イスラエル人と対立構造にあるふたりだということ。映像の中でも抵抗運動をイスラエル人が手伝ったり、イスラエル側で交通事故を起こした監督のイマードがパレスチナではなく、イスラエルの病院で手術を受ける場面がある。人と人とは確かな交流があるのに、国と国との思惑に振り回されているということ、そして、子ども達にはただ憎しみが積もっていくのがわかる。
この映像が撮られたのは、2005年から2010年。今、イマードの家族はどう過ごしているのだろうと考えてみる。
追記:
紛争で家族や親族を亡くしたイスラエルとパレスチナの青年らを招いて交流する「中東和平プロジェクトin静岡」の記事2016.02.09