【本】「森に眠る魚」
ママ友との付き合いに疲れてしまったら…

本・映画・TV
2015年8月27日(木) 10:53

せまい、せまい、せまい、生きる世界がせまい。だから、性別役割分業に縛られ、圧倒的にメディアリテラシーが不足するのだろう。「幼稚園ママ」とひとくくりにされる母親たち。それぞれにこうありたい自分、こうあるべき子どもや夫を頭に描きつつ、現実とのギャップを前に心休まるときがない。苦しすぎると思いつつ、読み進めてしまうのは、登場人物たちの言葉や心に「自分」を見つけてしまうから。

物語は葛藤をない事のように振る舞う表面的な「ママ友」とのつき合いで疲弊し、反お受験で共感したママ四人を取り巻く日常生活で綴られる。急速に仲がよくなり距離を縮める付き合いが、徐々に破綻していく過程は「ママ友」経験を持つ女性ならかんたんに批判できないだろう。
そして、この本の登場人物たち、夫との関係性が出会った頃から更新されていない。夫の中の妻は自分に都合のよい言動をした時のまま。僕を頼ってきた弱い彼女、受験はさせずに伸び伸びさせたいと言ってた彼女、でも、妻たちは日々の暮らしの中で強くなり、考えを変えることだってある。
文京区の幼女殺人事件を題材にした小説。苦しくて、何度も読むのをやめたいと思いつつ読んだ。ママ友界を大げさに描いてるとするか、身につまされるか。
諸悪の根源はジェンダーと言える小説。夫、妻、父、オンナ、母、子ども、割り当てられた役割、誰かが決めた役割を無理に演じなくてもいいよね。唯一、役割を放棄しちゃってる「妹」がまっとうに見えるもの。

(ライター はくのともえ)

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