ぶっくとーく【池川玲子さん】ヌードと愛国 
2015.07 日本女性学習財団ぶっくとーくレポート

レポート
2015年7月15日(水) 00:13

ぶっくとーく

― ヌードと愛国

池川玲子さん

 

このブックトークは、毎回一冊の本を取り上げ、その著者を迎え話しを聞きます。今回は「ヌードと愛国」の著者、池川玲子さん。ドキッとするタイトル、そして、研究書なのにミステリータッチ、そんな著書の裏話を著者自身が語りました。

池川さんは「在野」で青鞜の研究をしていたという方。港区の男女平等センターでコーディネータ経験があることからも、ジェンダーを噛み砕いて、身近なものとすることは得意とするところなのでしょう。

 

まずはタイトルの裏話から。初出は、日本女性学習財団の月刊情報誌 「We learn」に連載していた〈はだかのジェンダー史〉。出版化にあたり、編集者から「ジェンダー」という言葉は使ってくれるなというリクエストがあったそ うです。「ジェンダー」というだけで、まず、男性の読者がつかないと。もともと、池川さん自身がジェンダーの多義性に疑問を持っていたので、「割にすんなり受け入れた」と笑いながら、「結果として読者層が広がったことはしてやったり」と話しました。

 

各章ごとに、一枚のヌードをていねいに読み解いていくミステリー仕立ての学術書。ミステリータッチにした理由を「研究は謎解きだから」と語ります。

 

トークで取り上げたのは、第5章「ミニスカどころじゃないポリス」。この本の表紙にもなっている写真家大束元の作品、ヌードの女性が銀座四丁目交差点で、交通整理をしている写真を読み解きます。

 

日本で「婦人警察官」が誕生したのが終戦直後。著者の私見では、「婦人解放」「母性」「セクシー」が彼女達のイメージだそうです。女性があれこれと背負わされるのは、今も昔も変わらないとあらためて思いました。

 

それを象徴するように、1947年、読売新聞が取り上げた女性警官の記事が笑えると紹介します。『ふくよかな乳房をぴったりと紺の制服につつんだスマートな”婦人警察官”であってみればポケットには手錠の代りにコンパクトも潜んでいようし、頬をなぶるほの暖かい春の息吹きに青春のいのちが躍動もしよう。ヤミを摘発しドロボウを捕まえるもいい。だか若さと美しさ、そして健康を制服につつましく包んだ彼女たちの姿それ自体がいわゆる『警官』の清涼剤であり、とげとげしい街のこころを解きほぐす春告鳥である』。確かに笑えます。

 

そんな『婦警』さんをヌードして、大束元は何を表現したかったのでしょうか。戦時中も写真を撮り続けていた大束は、戦闘シーンを好まず、草にとまるバッタと爆撃機を合成したり、軍国喫茶で働く未亡人を取り上げたり、玉音放送を聞く少女に涙を加えたりして、戦争を皮肉っていたようです。

 

では、この女性解放のシンボルである「婦警」が立つ場所にヌードの女性を立たせた訳は…。

 

イメージを頼りに歴史を読み解く研究を教えてくれたのは、恩師の若桑みどり先生だと紹介しながら、「そのイメージによって一番得をする人は誰かと推理していく」この本。戦中の翼賛体制や60年代安保闘争とヌードとの関係性についての推理を読み進めながら、愛国とジェンダーを考えさせられる本。ひとりで読んでいた時は、頭がくらくらしたけれども、著者池川さんのお話しを聞いてると、なんだかすべてが腑に落ちました。

 

 

(ライター はくのともえ

 

はくのともえ